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Memory of Night 番外編
第4章 Episode of AKIRA

 かけ合いに応えながらも、晃の手は黒と緑のチェック柄のシャツを掴んでいた。

「これなんてどうだろ?」
「どうと言われても……」

 基本的に洒落た物をあまり着ないので、宵には自分に合う色がいまいちわからなかった。
 軽く首をかしげて晃の手にあるシャツを眺めていると、ふいに声がした。

「それ、素敵ですよねぇ! 春の新作なんですよー」

 振り向くと、そこには先ほどの女性店員。
 両手を胸の前で組みながら、にっこりと微笑みを浮かべ、二人の後ろに立っていた。

「お買い求めになられるのは、こちらのお客様……ですか?」

 手のひらで柔らかく宵を指し示しながら、店員は晃と宵の顔を交互に見つめる。

「ええ」

 晃もにっこりと笑って応答した。

「失礼いたします」

 店員はやや強引な仕草で晃の手からシャツを取り上げると、宵の体に当てがう。

「まあ! とぉってもお似合いですよー!」

 店員はややオーバーに驚いてみせてから、再びにっこりと笑う。
 オレンジを基調にしたナチュラルなメイクとはうらはらに、接客用の甲高い声はやたらと耳に響いて不快だ。
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