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Memory of Night 番外編
第4章 Episode of AKIRA
晃も顔を上げた。
店内の客も、もう一人の店員もこぞって二人に注目している。
「ああ、つい」
晃は苦笑し、宵は再び頭を抱える。
店でナンパまがいなことをして、本当だったらドン引きされてもおかしくないような状況なのに、周りにその気配はない。
それは晃の甘い笑顔と整った顔のせいなのだろうと思うと、ほっとするようなそうでもないような複雑な気分になった。
その時、接客も忘れ放心状態で立ち尽くしていた女性店員の手から、先ほどのシャツが滑り落ちた。
ハンガーが床に当たり、小さく音を立てる。
「あ……す、すみませ……っ」
可哀想なほど動揺し、あたふたとしゃがみ込む女性店員。
だが、一瞬早く宵がそのシャツを拾い上げ、店員に差し出した。
「……?」
「これ、買います。試着はいいんで」
ぽかんと口を開けたままの店員に紙幣を差し出すと、女性店員はようやく我に返ったようだった。
小走りにレジへと向かっていく。
会計を済ませると、女性店員は九○度近く頭を下げて「ありがとうございましたっ!」と二人を見送った。
そして、晃は申し訳なさそうな笑み、宵はまた会釈を返してようやくその店を後にしたのだった。