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Memory of Night 番外編
第4章 Episode of AKIRA
ガラスケースの間の通路を覗きこむと、小さなカウンターの向こうにいたのは白髪の混じり始めた中年の男性だ。
黒い長袖を身にまとい、分厚い本を片手に座っていた。
おそらくこの店の人間だが、客を見つけても顔すら上げず、視線は書物に向けられたまま。
男は言った。
「そんなにこの人形たちが珍しいかい? ……まあ、今はあんまりこういう類の店はないか」
「……初めてです」
人形だけを売る店なんて見たことがない。
素直にそう応えると、男がようやくわずかに顔をあげる。
宵の顔と服装をちらりと観察し、再び口を開いた。
「多分あんちゃん達が買えるような額じゃないけどな、どの人形も。見るだけはただだ。好きに見て行きな」
聞き取りづらいかすれた声でそれだけ告げて、男の視線はまた本へと戻っていった。
下の服屋ではどの店員もこぞって商品を売ろうと手厚く接客されるのに、この男の態度はひどく素っ気なかった。
接客のマナーとしては良くないのかもしれないが、宵にとってはこっちの方がありがたい。
あれこれと、新商品を売りつけようとしてくる店よりも煩わしさがなくて良かった。