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Memory of Night 番外編
第4章 Episode of AKIRA

 無愛想な男に軽く頭を下げ、宵は店の奥へと進む。
 通路はやけに狭かった。二人の大人がやっと通れるくらいだ。
 ぶつからずにすれ違うのは難しいだろうと思われたが、幸い他に人の気配はなかった。
 そして、通路の両側に並ぶのはやはり人形。白で統一された店内で、表と同じガラス越しに立っていた。
 見かけるのはやはり異国の人形だが、肌や髪や瞳の色も、纏っている洋服もそれぞれ違っていた。
 宵は立ち止まり、おもむろに目前の人形を眺めた。
 髪は赤みがかった茶色。瞳は薄い緑。纏う衣服は赤いレースで覆われた華やかなドレスだった。
 片腕を上げ、巻いた髪をかきあげている。
 髪も肌も先の広がったドレスの袖から覗く指先も、本物の人間のようにリアルだ。けれどもおそらく、白い肌は触れれば冷たくて堅いのだろう。
 宵は再び人形の顔に視線を移した。
 緑色の瞳は、ガラスなのか宝石なのか、ギラギラと輝いて見えた。冷たいきらめきと、表情のない面立ちが、人間らしい温かみを奪っているように感じる。
 美しいけれど、やはり造り物だ。どこまでも精巧な。
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