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Memory of Night 番外編
第4章 Episode of AKIRA
整った顔立ちをしているくせに、桜を見ていた時の宵の顔には表情があまりなかった。
目に馴染む淡い色を携えて儚く散っていく桜の前にいたからか、もっと繊細でおとなしい子かと思っていたのに。
言葉を交わしてみるとまったく違った。
「宵の容姿は詐欺だと思う」
「……は?」
「言動と顔が合ってないし」
「知るか。……おまえは俺に幻想を抱きすぎなんだよ」
「……かもな」
晃は苦笑した。
宵と一緒にいる時間が増えるに連れて、小さい頃見た人形のイメージは払拭されていく。
今日たまたまあの人形ショップを見つけたから昔の気持ちを思い出したものの、あの頃のように日本人形の面影が重なることはなくなっていた。
今はただ、口の悪いお姫様が愛しくて仕方ないだけだ。
「――そろそろ本屋行くか」
ふいに宵が軽く伸びをし、肩をボキボキと鳴らす。
「そうだね。だいぶ休んだし」
晃も頷き、宵から飲み終わった缶を受け取りそばにあったゴミ箱へと入れる。
その間に宵は脇に置いていた大量の紙袋持ち、立ち上がった。
二人で歩き出す。目指す先は同じ階にある本屋だ。