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Memory of Night 番外編
第5章 美少女メイドを捕まえろ!

 宵のことだから、どうにかここから逃げ出そうと行動を起こすだろうと予想していたのに、メイドは動き出そうとはしなかった。
 それどころか、大山を見据え微笑を浮かべてさえみせる。
 日当たりが悪く薄暗い教室内でも、艶やかに映る笑み。
 不覚にもドキッとしてしまった大山に、そのメイドはゆっくりと近づいてきた。
 目前にまで迫られ、大山は慌てて手錠を開こうと持ち上げた。けれどその一瞬前に、メイドにやんわりと、手錠を握っている方の左手を掴まれてしまう。

「え……」

 手を握られ、大山は焦った。

(宵……だよな?)

 心の内でもう一度同じ問いかけを繰り返した。けれど、間近に迫ってくるメイドには宵の面影がほとんどない。
 漆黒だった短髪は赤茶に染まり、肩よりも長いストレート。
 唯一瞳の色は灰色で彼を連想させるけれど、その周りは薄く黒で縁取られ、メイド姿の彼の目をより大きく見せていた。
 ふさふさと長い睫毛。薄暗い中、キラキラと光るラメ入りらしき茶色いシャドー。
 頬にも何か塗っているのか、朱色をしている。
 微笑を浮かべる口元には、ピンク色のリップグロス。
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