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Memory of Night 番外編
第3章 熱々、バレンタインデー!
人が一日走りまわってようやく返し終えたのに、それをおもしろがるのも失礼な気がする。
むっとした表情を浮かべる宵に、晃は一言「ご苦労様」と言い添えた。
それだけでなんとなく気分が晴れるような気がして、自分もたいがい現金だな、と思う。
「そう言えば、おまえチョコは?」
不意に宵が思い出したように晃の手元を覗き込む。
晃の手荷物といえば、いつも使っている学生鞄だけだ。あの中には、教科書やら参考書やら電子辞書がぱんぱんに詰め込まれているのを宵は知っている。
スペース的にチョコは入らないだろう。
晃だって、普段被っている甘いマスクと整った容姿のせいでとてもモテる。
自分なんかよりも、チョコを多く貰っているもんだとばかり思っていた。
だが、チョコらしきものの影は見当たらない。
それが宵には不思議だった。
「貰ってねーの?」
「貰ってないよ」
あっさりと肯定されて、なんだか拍子抜けしてしまう。
晃は宵の髪を右手でそっと撫でながら、目元をやわらげた。
「貰うわけないだろ? ここにちゃんと本命がいるのに」