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花屋のあの人
第2章 第2章 2.友人のお誘い
「さあ、どうぞ!ここが僕のお店です!」

満面の笑みをたたえた彼と花屋をゆっくりと交互に見た斎の頭の中は
「どうしてこうなったんだっけ?」という疑問でいっぱいになっていた。
その間にも彼は斎の手を引き店内へと進んでいく。
それに抵抗する間もなく引きずられるように足を踏み入れた店内には、ふわりと花の香りが広がっていた。
思わず、その空気を吸い込みたいと深呼吸をする。
その時、

「ふふっ」

と、隣で小さな笑い声が聞こえ、斎は思わずそちらへと視線を向ける。
そこには口元に手を当て嬉しそうに笑う彼がいた。
また胸が高鳴る。

「あっ、すみません…笑ってしまって」

斎の視線に気づいた彼は困ったような笑みを浮かべ目をそらす。

「あ、いえ…その…素敵な店内だな、と」

慌ててそう口にすれば、彼の瞳はまるで褒められた子供のようにキラキラと輝いた。

「ありがとうございます…!」

胸元で両手をぎゅう、と握り花が咲いたように笑う彼から斎は目を離せず、ただただ立ちすくむ。

「ここは僕が初めて1人で出したお店なんです」

過去の記憶に思いを馳せるように視線を宙へと漂わせた彼はまたくすりと笑い、

「本当は見知った土地で開こうと思ったんですが、新天地で開くのもまたアリかな、って」

と、口にする。それを聞いた斎の口から

「俺も、なんです」

と、自然と言葉が出る。その言葉を聞いた彼は少し不思議そうに小首をかしげた。
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