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あいの向こう側
第2章 肉食女子
沙映はごくごく普通のOLだ。

書類をコピーし、
客人にお茶を淹れてPCをたたく。


「沙映〜、
今日帰り食べてかない?」
同僚の涼佳【リョウカ】が誘ってきた。

「いいよぉ、どこにする?」
「こないだの〔やまあらし〕どお?」
「あ、良いね肉くいたい〜♪」



夕方6時。
片付けをして着替え、
涼佳と【やまあらし】へ向かう。


猪肉・鹿肉など牛豚以外の肉料理もある、
最近オープンした肉料理店。

サラダや創作メニューも豊富で、
沙映は以前来て気に入った。


「しっかしあの部長は本当に逃げが上手いよねぇ」
涼佳が会社の上司の悪口を笑いながら言う。


「課長が悪いわけじゃないのに気の毒だわ」
部長のミスを肩代わりにされ取引先へと頭を下げに走った課長の姿が哀れだった。

「逃げが上手いと得だよねー。
あたしの彼氏さぁ、」
涼佳は彼氏の悪口も話し始めた。


沙映は聞きながらも肉料理の美味さしか身体に入っていない。
涼佳の口から出る悪口は、沙映にはBGMである。


猪肉は臭みがあり硬いが、そのぶん食べ応えがある。
この店は女性にも人気で食べやすい様に薄くカットしスモークしていたり炙ったりと工夫がされていた。


牛豚の肉料理もちゃんとあり、
鳥肉もあって肉好きには堪らない店。


みしみしと音をたてながら咀嚼する。
獣の血肉が身体じゅうに行き渡り、
沙映の動物的欲望と合流するのはなんという至福だろう。


明日は誰を喰おうか――――

沙映の細胞は、
早くもsexを欲していた。
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