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あいの向こう側
第26章 境界線
ポカンとしたままスーツを直して資料室を出る。


午後からの外回りをこなし、

帰社した。


19時。
アカネも残業をしていた。



「__アカネちゃん。今日はその………本当に済まなかった。ごめん」
俺はアカネの席に走り、
頭を下げた。


アカネはジッと俺を凝視した。


「じゃあ、責任取ってください。
あたしと付き合ってくださいよお」



「……………は?……………」


アカネは椅子をクルクル回して、
「だから~。あたしを彼女にして?
じゃないと言いふらしてやるうー!」
と言う。




「わ!
わ、わかったから…………仕方ない……な」



アカネがいたずらっ子のようにニカッと笑った。
「ラッキー♪♪♪
先輩の弱味につけこんで彼女になれたあ♪」




ちょっとだけ可愛いなと思った。




************



「ねぇ、結広【ゆいひろ】みて見て!
あのバルーンアートすっごおい!」

アカネが俺を呼び、
手をひっぱる。


何だかんだであれから2カ月。

俺たちは付き合っていた。




休みに近くのテーマパークに出かけた。

ショートパンツから伸びたキレイな細い太もも。
ボアブーツがふくらはぎを包んでいる。


まさか、こんな事になるなんて…………



里奈からは一切の連絡もない。
俺もしなかった。



今じゃ粘つくような喋り方じゃないと、
可愛く思えないのだ。





ファミリー層も沢山いる。走り回る子ども。
べったりとくっついているカップル、
制服のまま抱き合いつつ歩くカップル。




俺は晴天の空を見上げた。


泣いていた空は、カラリと晴れ笑っているかのようだ。



(ま、こういうこともあるなぁ)

「早くうー!結広のもくれるってぇー!」
アカネがバルーンを振っている。


俺は笑い、歩き出す。


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