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あいの向こう側
第27章 夕暮れに
(まただ。)


夕真(ゆま)は制服のミニスカートから伸びた脚を止めた。


♪~~♪~~♪♪~~


どこからかともなく、
メロディーが流れてくる。


二学期からこの街に引っ越してきたばかりの夕真には、

夕暮れ時に町内に向かって流れるメロディーに未だ慣れない。





空を見上げた。

(うわ-、明るい………)





夕方5時。



海に近いこの都市は、夕暮れ時になっても比較的明るい。



そのことに最近気づいた。



(ママ、帰ってるかなぁ……)

看護師をしているママは今日は日勤のはず。



夕真は、
(馴染み難い街そのものに自分の肉体が浮遊しているみたいだ)と思った。




_____新しい学校は、
女子高校だ。


前の学校は田舎にあって、
中学も3つくらいしかなく皆が皆その高校に進学する。



父親と離婚で揉めていた母が、
やっと親権を取り移住した。

『別に良いんだけどね…』

誰にも聞かれぬよう、ちいさく呟いた。




小さい頃から、
家の中は落ち着かない場所だった。


大きなケンカでもしてくれたら、その方がよかったかもしれない。


父と母は他人行儀で、仮面夫婦だった。


だから離婚が決まった時にはホッとした。


ああもう息苦しい場所じゃなくなる、と……………





赤く焼けた空をぼんやり見ていたら、
携帯が鳴った。


節約のためだとかでガラケーしか買ってくれていない。
が、心が弾んだ。


『もしぃ?』
嬉しさを抑えて素っ気なく出る。



『怠そうだな(笑)
帰り?今』
電話の向こうで笑っているのは、
前の学校で親しかった成田悠聖(なりたゆうせい)。


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