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あいの向こう側
第27章 夕暮れに
『うん、帰り道だよ』


『何か音楽流れてない?
変わってんなぁ』


『あ、分かる?
夕暮れ時にメロディーだけが流れるの』


夕真が以前居た街__即ち、今悠聖が住んでいる街だ___は夕暮れ時は静かだった。

響いていたのは子供たちの笑い声くらい。



『……………イジメられたりしてないよな?』

ドキッとした。

『してない、してない!
緊張はしてるけどね、まだ』
夕真は手振りをした。



そう。
イジメられてなんかない。


毎朝無言でじーっと見られるのは、
彼女たちも未だ慣れてないだけ。



転校生というのは異物混入なのだ。




『そうか?なら、良いけど。
タノスケがさぁ、「夕真が居なくてつまんねー」ってたまに机蹴ってるぞ』


『そうなんだ(笑)
で、山ピーに叩かれて?』

『そそそ。
女子じゃねぇよアイツは』

タノスケとは、

田之倉美和(たのくらみわ)。

夕真の幼なじみだ。

美和は未だに携帯も持ってなくて、
たまに夕真から自宅に電話をしている。


誰からも好かれるサバサバした性格だ。

山ピーとはかの芸能人とは全く似ていない、
担任・山之内(やまのうち)というおっさん先生のあだ名だ。


(タノスケだったら、上手くやれたのかなぁ)

思いながら悠聖と話し、
通話を終えた。








25階建てのマンションにたどり着く。



見上げても、どこにウチがあるのか明確に分からない。




エレベーターに向かいながら、
夕真はメロディーが終わっていると気付く。





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