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あいの向こう側
第31章 魚の館
滑らかに泳ぐ魚のように、
二つの肢体がベッドの上で動いている。
私はそれを凝視しながらペンを走らせた。
古びた小屋のような、アトリエ。
名ばかりだ。
キャンバスが何十と転がっている、むさい部屋。
二つの肢体だけが生きて輝いている。
私の目はもう、年老いてしまった。
『…………ん、はあっ…………』
『ここ?食べたいわ』
『ダメ、エミ。激しく動かないで……あっ』
エミがルカの恥毛に顔を埋め、
ぴちゃぴちゃと音を立てる。
ルカの喘ぎ声が小さく木霊した。
『んくぅ……………はあっ、あっ』
目だけではない。
体も、骨も…………………
動くのは右手だけだ。
老年になり長く描いていた油絵を辞め、
デッサンばかりするようになった。
動くものを感覚のみで描いたら、嵌まってしまった。
尖った鉛筆の先のような鋭い感性も失ったのに。
『はうんっ!ああ、ルカ!』
ルカが心許ない乳房を強く掴んだら、
エミが跳ねた。
美しい肢体。
まだ、熟していない青い果実。
二人の長い髪がそよぐ。
風すらないのに、小さな心許ない膨らみが闊達に動くとそよぐのだ。
カツン!
鉛筆の先が欠けた。
私は慌てて新しい鉛筆を磨ぐ。
ふわりと爽やかな香りがして、顔を上げる。
『大丈夫?ですか?あたしが削るね』
私の顔は口が半開きで間抜けだろう。
冷たくさらりとした手が触れる。
エミなのか、ルカなのか。
魚のように動いていないと、
私には判別がつかない。
『ありがとう』
掠れた声で礼を言い、再び二つの肢体が動くのをじいっと見詰める。
この時が止まればいいのに。
二人の喘ぎ声を聞きながら、時間が過ぎてゆく。
二つの肢体がベッドの上で動いている。
私はそれを凝視しながらペンを走らせた。
古びた小屋のような、アトリエ。
名ばかりだ。
キャンバスが何十と転がっている、むさい部屋。
二つの肢体だけが生きて輝いている。
私の目はもう、年老いてしまった。
『…………ん、はあっ…………』
『ここ?食べたいわ』
『ダメ、エミ。激しく動かないで……あっ』
エミがルカの恥毛に顔を埋め、
ぴちゃぴちゃと音を立てる。
ルカの喘ぎ声が小さく木霊した。
『んくぅ……………はあっ、あっ』
目だけではない。
体も、骨も…………………
動くのは右手だけだ。
老年になり長く描いていた油絵を辞め、
デッサンばかりするようになった。
動くものを感覚のみで描いたら、嵌まってしまった。
尖った鉛筆の先のような鋭い感性も失ったのに。
『はうんっ!ああ、ルカ!』
ルカが心許ない乳房を強く掴んだら、
エミが跳ねた。
美しい肢体。
まだ、熟していない青い果実。
二人の長い髪がそよぐ。
風すらないのに、小さな心許ない膨らみが闊達に動くとそよぐのだ。
カツン!
鉛筆の先が欠けた。
私は慌てて新しい鉛筆を磨ぐ。
ふわりと爽やかな香りがして、顔を上げる。
『大丈夫?ですか?あたしが削るね』
私の顔は口が半開きで間抜けだろう。
冷たくさらりとした手が触れる。
エミなのか、ルカなのか。
魚のように動いていないと、
私には判別がつかない。
『ありがとう』
掠れた声で礼を言い、再び二つの肢体が動くのをじいっと見詰める。
この時が止まればいいのに。
二人の喘ぎ声を聞きながら、時間が過ぎてゆく。