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あいの向こう側
第5章 ひとつぶのセンチメンタル
飛行機に乗り、
生家がある山陰地方へと向かう。


特急の車内で景色を眺めた。


大型ショッピングモール。
ビジネスホテルの建物。

市民体育館の丸い屋根。




それらを見ては父を頭に浮かべた。

最後に顔を見たのは、
3年ほど前か………


60を過ぎた父はアルバイトのような働きかたをして細々と生活をしていた。

特別社交的でもなく、
かといって酷く内向的でもない。


不整脈があった。
服薬で調整できる程度だ。

『死因は動脈破裂なんです。
山で倒れていて…
狩猟に入った人が発見して下さいました。
お義父さん、なんで山になんか居たのかしら』


義理妹はおろおろしつつ、疑問を残した。



父の趣味は将棋と囲碁。
たまに友人とゴルフをするくらいだ。



わたしの母親は、
わたしが小学生の時に男を作って出て行った。

時代的にも田舎では稀有な出来事だったから、
わたしは好奇の目に晒された時期があった。


それっきり。
母親がどこで何をしているかもわからない。


父はわたしと弟を男手ひとつで育て上げたのだ。

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