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あいの向こう側
第5章 ひとつぶのセンチメンタル
車窓から見渡す田舎の風景は、
しばらくぶりで変わっていた。

大差はないが………


家屋が増えた気がする。


わたしはスーツ姿のまま、
ジャケットを羽織っている。

義理妹から一報を受けたあと、
喪服を取りにアパートに帰った。
バッグに詰めて、直ぐ飛行機の予約をした。冬の終わり。時期的にチケットの空きがあった。

髪は黒いままにしてある。化粧も薄く施す程度だ。


(普段から喪に服しているみたいだわ…)



父が死んだというのに、
わたしはふふっと笑ってしまった。


隣席のサラリーマンがビクリと体を揺らす。

すみません、と小さく告げる。



―――父は寡黙だ。
母親が出て行ったあと、
わたしたち姉弟の弁当を作り、
学校行事には出席していた。
叱られたことは沢山あった。
が、
無闇に怒鳴り散らしたり身勝手な感情をぶつけることは無かった。



――死が突然で、
哀しくないのか?
わたしは妙に清々しい気持ちで生家に向かう自分を気味悪く思う。

まるで小旅行に来ているようだ………

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