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プリズムのかけら
第2章 Be Honest
そうだ、久しぶりだと思ったら、そう言えばここ一年ほど七海はアメリカで舞台稽古を兼ねた留学をしていたんだった。
「どうだった?アメリカは」
「うん、エキサイティングだった。良い刺激になったわよ」

同い年の七海は高一だから、完全に子役を脱皮して大人の女優としてのステップを踏まなければいけない時期だ。母への相談もそのあたりだったのかもしれない。
「事務所をね……、どうするかちょっと悩んでいて」
「なるほど、それでおふくろに」
「うん。今の日本の芸能界で、この年で私がどういう風に売っていけばいいのか……、ちょっと悩んでるんだよね。っと、匠にこの手の話してもしょうがないよね」
「いや、まぁ……ね。けど僕も物書きとして少しは似たような悩みもあるけどね」
中学生の賞で大賞を受賞した僕、父親が超有名小説家の藤堂京一であるというプレッシャーを抱えた僕。これはこれでいろいろ悩ましいもんだ。
「そうよね、匠は匠でいろいろあるでしょうね……」
七海も七海でいろいろある、ってわけか。随分と綺麗な女に成長してるもんな。けど、まだ男を知らない感じがある……。そっちの面でも発展途上、ってところか。

「僕としては、そうだなぁ、七海は可愛い系じゃなくて美人系だし、演技も実力派だから、アイドル女優みたいな感じでやって欲しくはないな。そういうとこ伸ばして仕事くれる事務所どっかいいとこないか、おふくろに話しておこうか」
「……ありがとう、嬉しい。さすが物書きさんね、分析も正確だしすぐに人の心がわかっちゃうのね」
「どうかな。そんなこともないよ。鋭いようで女の子の気持ちわかってないってよく言われるし」
「それは軽率に遊び過ぎだからなんじゃないの?」
「やっぱりそうかなぁ?ははははは」
七海も一緒に笑った。彼女は僕が女癖が悪いことはよく知ってる。

「刺されたりするような恨み買ってたりしないでしょうね?」
「そのへんは大丈夫だよ、相手はそれなりに選んでるから」
そう、僕は相手を選んでる。本気になってめんどくさそうな女とはしない。処女とは、しない。
「そういうこと言ってると痛い目に遭うわよ、そのうち」
「ヘーキだって。で?そう言う七海はどうなの?アメリカで男でもできた?」
「なっ、ないわよそんなの」
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