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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第114章 ★★2015年 バレンタイン企画★★

妹2人を育て上げた、と言っても過言では無い純也にとって、
この「頼むよぉ~。ガキンチョのお守りしてよぉ~」と言わんばかりの職務内容は、
まさに 雇用者 と 被雇用者 の利害が完全に一致していた。
そういえば、最後に帰国したのは5年前で、日本の記憶もあやふやだし……。
一度 故郷に腰を据えて暮らしてみるのも、良い経験かも知れませんね。
世襲制である篠宮ホールディングスは、トップが代替わりしたばかりで。
グループの篠宮證券は “投資銀行” カテゴリーに於いて、世界で3本の指に入る超大手。
それに、こんな大企業の社長宅での執事経験は、後に転職時の売りとなるのは間違いない。
「…………よし」
目の前にぶら下げられた美味しそうな餌に、迷い無く ぱっくり喰い付いた純也。
さっそく執事ギルドにメールを返信し。
1週間後には、日本行の航空機に飛び乗っていた。
(このチャンスを掴めなかったら、砂漠ですか……。まあ、寒いよりは暑いほうが得意ですし……)
能天気な事を思いつつ、19時間のフライトを有意義なものにすべく、持参した書籍を紐解く。
ペラペラと一定のリズムで繰られていくページ。
少々気分が高揚しているのは やはり、
自分のルーツである祖国に向かっているという、遺伝子レベルでの歓喜なのかも知れなかった。
そう。
その時の純也には、知る由も無かったのだ。
これから何十年という時を共にする主と、
かの地で巡り合う事になろうとは――
(おおげさw)
 

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