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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第114章 ★★2015年 バレンタイン企画★★

 羽田空港へ到着し、その足で渋谷区松濤へと向かった朝比奈だったが、

 篠宮邸に辿り着いてからずっと、内心 目を見張ることの連続だった。

 執事学校で研修を受けていた城と比べても、全く遜色無い石造りの屋敷に まず驚き。

 家令と料理長の他にも、常時 数名の執事とメイドが仕えている、日本では考えられぬ贅沢ぶりにも驚いた。

 中でも驚嘆したのは、

 てっきり1人ずつ行われると高を括っていた採用面接が、複数人で行われた事だった――





「クリス様、ヴィクトリア様。今から1時間、こちらの2人と遊んで下さいね」

 たった数分間の説明の後。

 五十嵐と名乗った執事が 朝比奈ともう1人の面接対象者を連れて行ったのは、

 なんとお世話をする事になる子供達のところだった。

 五十嵐の流暢な英語の呼び掛けに振り向いた幼女から、どこか甘ったれた英語の返事が飛んでくる。

「え~~、五十嵐が遊んでくれないのぉ~~?」

 白いふっくらほっぺに、上質な煙水晶に匹敵する輝きを放つ、お人形の如き大きな瞳。

 細い金髪が綿菓子の様に包み込む3歳の女の子は、拗ねた様に薄紅色の唇を尖らせていた。

 彼女がお世話する双子の内の1人――ヴィクトリア嬢、なのだろう、が……。


 自分でも判るほど、己の瞳孔が瞬時に広がり。

 ゆえに情報量と鮮やかさを増した対象に、朝比奈は「今は面接中」という現実すら失念し、ただただ絶句していた。

「……~~っっ」

(か……っ 可愛い過ぎるだろう……っ)


 自分には稚児趣味は無いので、断じて恋愛感情は無いが。

 “愛でるべき対象” 

 いわゆる、子猫とか子犬とか、冬に団子と化した兎といった類いのモノ。

 上記を見つけた人間に良くある「キュン」とした甘い痺れが、スーツの胸を擽る。


 フランスで育った朝比奈は、何十人と綺麗な女子、可愛い女子を見てきた。

 そんな目だけ()は肥えた朝比奈に舌を巻かせてしまうほど、

 目の前の3歳児の容姿は飛び抜けて素晴らしかった。

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