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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第114章 ★★2015年 バレンタイン企画★★

 日光が燦々と差し込む窓際。

 じい~とこちらを見据える幼女の輪郭は、白く眩く光り。

 その神々しささえ感じさせる佇まいは、正に――

「……Angel……」

「……――っ!?」

(こ、ここここ、心の声が漏れてしまった……っ!?)

 一瞬 冷や汗を掻いたものの、幸いな事に それは自分の声では無かった。

 己の隣、惚けたまま突っ立った男もまた、執事候補として面接に訪れた人間で。

 林という名の、英語と中国語が堪能な中国と日本のハーフだった。

「それでは お2人とも、宜しくお願い致しますね」

 林と朝比奈を交互に見比べた五十嵐は、そう言い置くと退室して行った。

(おや? そういえば、もうお1人は……?)

 数分前、五十嵐から最低限の情報として告げられたのは、

 仕えるのは双子の3歳児。

 ご子息・クリス と ご息女・ヴィクトリア

 ――という事だけ。

 何故かこちらを じい~~と見つめ、ニコリともしないヴィクトリアから、一旦 視線を外した朝比奈は、

 彼女のすぐ足元で、丸くなっている背中を認めた。

(あの子が、クリス様……)

 こちらを振り返りもしない幼児に興味を抱いた、その時。

「ねえ、遊ぼう!」

 先刻まで真顔だったヴィクトリアは、弾けんばかりの笑顔を浮かべながら男2人の元へ駆けて来た。

「初めまして、お嬢様。私は林と申します」

「ハヤシ~~? んっとね、ワタシはヴィヴィだよ~~」

 一瞬早く、ヴィヴィの足元に跪いた林。

 先ほどの “Angelの衝撃()” から我に返ったらしい彼は、人付きのする笑みを浮かべた。

「ヴィヴィ様、お可愛らしい愛称ですね。さあ何をして遊びましょう?」

「ん~~、おままごと か お人形さん遊び!」

 小さな手で林のスーツの袖を掴んだヴィヴィは、玩具が散乱している部屋の奥へと導いた。

「はい、林(さっそく呼び捨て)。お茶碗ど~ぞ」

「はい、ありがとうございます」

 
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