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桜舞うあの日のままで
第9章 最後の夜、想い出の夜
「俺、しょっちゅう、あの木を見てきたんだけど……それも明日の朝でいったん最後だな。見慣れてしまってるから、俺にとっては普段通りの何気ない光景のはずなのに、今になって名残惜しい気がしてきた」

「私も……同じ気分。明日の朝、悠が出発しちゃったら……私はもうこのお部屋にしばらく呼んでもらえなくなるし……」

 切なさと寂しさで胸いっぱいの風香。

 涙をこらえて、風香は1本きりの夜桜を見つめていた。

 時々風が吹いているのか、花や枝が揺れているように見える。

 風香と同じく、寂しげに桜を見ていた悠が、急に微笑みながら言った。

「でも……何度も言ってるように、永遠の別れじゃないんだ。夏休みや冬休みには、この部屋にも戻ってくるし。もちろん、来年の春休みにも、きっと戻ってきてるから、またこの部屋で一緒にあの桜を見ような」

「うん……! 待ってる……!」




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