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冷たい月を抱く蝶
第2章 温かい手のひら

ある日、両親は友人の男性に私をお金で売った。
1ポンドで私は売られた。
それが私の値段。

両親は私を売ると、その日の夕方に父の友人が現れて、私を家から連れ出した。

彼は明らかに善人とは呼べなかった。
私を馬車に乗せると、どこかの船に乗ると言われた。

 私は馬車の中で、自分が売られて行くことを薄々感じていた。

 その船に乗ったら二度と戻って来れないと感じた私は、彼の隙をついて馬車から降りて逃げ出した。

それからといったもの、私は今もこうして見知らぬ街を一人でさ迷っている。

 もうあの家に戻る気もない。そして、あの孤児院にも――。

もし戻ったら院長先生に迷惑がかかると思った私は、戻ることも出来ずに再び孤児へと戻った。

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