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冷たい月を抱く蝶
第3章 偽りの家族の肖像

「素晴らしいよ、瞳子……!」
「お前の奏でた旋律は綺麗な音色だった。きっと日頃の練習のおかげだろう。私は久しぶりに感動したよ」
「まあ、お義父様ったら……!」
「でも聴いてくれてありがとう…――。お義父様はいつもお忙しいから、私のピアノを聴いてくれるか、少しだけ不安だったの……」
「お義父様が少しでもリラックスしてくれたら、私はそれだけで嬉しいわ」
「瞳子。お前は本当におもいやりのある子だ。私はそんな優しい子に育ってくれて嬉しいよ」
「ほ、本当に……?」
「ああ、私の可愛い瞳子。お前は自慢の娘だ。血は繋がってはいないがお前は私のたった一人の家族だ。これからも私の傍にいてくれ――」
「お、お義父様……!」
私はその言葉に急に嬉しくなると、椅子から立ち上がって父のもとに駆け寄って抱きついた。

