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淳、光と闇
第20章 トランぺッター龍二、悲しみのレクイエム
「樹里さんは
脳に悪性の腫瘍がある。
それを今治療できるのは
アメリカだけ。
龍二君のあの
トランペットの音色は
わしと、ここにいる
由美君をおおいに
感動させてくれた。
なぁ、由美君?」
由美はゆっくりうなずいた。
「最近では
あんな音色を加味しだす
奏者は皆無だ。
悲しい音色の中に
逞しい想いが…
強い意志が感じられた。
そんな音色を
聞かせてくれたお礼じゃよ…」
「だ、旦那様!!
それでは樹里さんは??」
「時間がない。
間に合えば助かるわ。」
そこへさゆりが医師と共に現れた。
医師は龍二に
「樹里さんの
癌は進行している。
今アメリカに渡らなければ
助からない。
しかし、それでも…
間に合わないかもしれない。
龍二君、考えている
暇はないぞ!!」
医師に言われて龍二は即決した。
「アメリカに…
樹里を…助けて…!」
医師に泣きついた龍二。
「お願いです。
たとえ、間に合わなくても。
僅かでも可能性があるなら。
樹里を、樹里を…助けて…
お願いです。
樹里が助かるなら
俺は…俺は…
一生トランペットを
吹かなくてもいい!!」