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淳、光と闇
第36章 省吾の我儘
「お父さん!お父さん!!
嬉しい…でも私達…
どんな顔すればいいか
分からなかったの…
ごめんなさい、お父さん…」
「そうか…そうか…」
省吾はもう涙を止めなかった。
さゆりと淳はそっと病室を出た。
「淳、悪いんだけど…
今回の省吾様の担当を…
結花とゆりに譲ってくれないかな?」
「勿論です!!」
淳は元気よく返事をしたが…
さゆりを見ながら涙があふれ出た。
さゆりは淳を抱きしめて
「淳、私が…あなたの…
お母さんの…変わりしてあげるね…」
「婦長さん…
淳は、淳は…
羨ましいのです…
あの二人と旦那様が…
淳は羨ましいのです!!」
そう言って淳はさゆりの胸で
わぁわぁと泣いた。
物心付いた時には淳の両親は
死んでしまっていた。
気の強い淳は決して人前では
自分の寂しさを出す事はなかった。
そんな淳をさゆりと省吾は何よりも
可愛がった。
一人で生きてきた。
誰にも頼らずに生きてきた淳。
でも、やっぱり…寂しかった。
親が恋しかった…
そんな淳が省吾と結花、ゆりの
親子の名乗りを見て…
今日の出来事を見て…
感情を抑えることは不可能だった。