この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
砂の人形
第3章 過去の残り火
 私は、勢いよくテルベーザを振り返った。彼の目が久しぶりに、私を捕まえる。テルベーザの眼差しは、なんというか、とても深い。真っ直ぐに私に流れ込んできて、胸の奥を熱くする。態度はいつだって冷たいくせに。視線だけは、情事よりもずっと温かく、優しく、私に注がれていた。今も……前と変わらないその眼差しで、私を見つめていてくれた? そう信じられればいいのに。

「随分な水と食料を積まれていました。あれでは、駱駝はすぐに歩かなくなるでしょう。重たすぎます」
「なんのこと?」
「あなた以外に、誰があんな乱暴な旅支度をすると言うんですか」
「私が、旅に? なんでそんなこと」
「……こんな生活が、嫌なんでしょう」

 テルベーザに触れられるのが嫌なら、もっとずっと前に逃げ出してる。そう口にするのはあまりにも辛い。喉元まで出かかった言葉を飲んで、私は首を振った。

「そこまで分かってるなら、行かせてちょうだい」
「あんな装備で、あなた一人で砂漠に? 冗談でしょう、サルーザ様の遣いに見つかるより先に死んでしまいます」
「やってみなきゃ分からないでしょ」
「分かります。僕は砂漠で育ちました。姫様の体力では一日と持ちません。大体、道案内もなしにどうやって進むつもりですか」
「馬鹿にしないで。地図も星も読めるんだから……」
「そんなこと、なんの役にも立ちませんよ!」

 怒鳴られて、身がすくむ。テルベーザの大きな手が、肩に食い込んだ。彼の口元が小さく震えている。……ああ、テーゼ、あなた初めて私に触れたときも震えてた。怒っているの? 怯えているの? 私には、あなたのことがあまりよく分からない。知りたいと思っていたけど、あなたは、私を心の中には入れてくれなかった。

「どうして、僕に相談もなく」
「だって……」

 あなた結局、お父様を選ぶじゃない。いつもいつも、私の頼みなんか聞いちゃくれないじゃない。私にはなんの力もないから? あなたはただ傍にいることさえしてくれなかった。私は。他の王女や王妃と騎士たちのように、毎日隣で笑い合っていたかった。それだけのことも、かなえてくれなかったくせに。

「ついて行きます」
 声を詰まらせながら、テルベーザはそう言った。止められると思っていた私は、思わず聞き返す。
「え……?」
/78ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ