この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
砂の人形
第3章 過去の残り火
 北の肥沃な大地を治めるルニルカンは、その広大な土地を五つに分割し、中央を国王が、残る四つの地域を四人の優秀な王子が統括している。第二離宮域と呼ばれる西方の土地を担うのは、第三王子のペテ様。年は十二、三上だったかしら。男性にしては丸みを帯びた、人懐っこい目をした方……彼が、私の婚約者。

 出自が悪く、後宮では村八分。意地悪されるのが怖くて社交界にも出席せず、死亡説まで流れていた、そんな私に、彼のような偉い人から声がかかるなんてありえなかった。でも、テルベーザが全部変えてくれたの。私にはなんの力もなかったけど、彼がある日突然現れて、少しずつ変えてくれた。私の立場も。私の心も。いろんなことを。

 初めて会った時のことをよく覚えている。まだ日の光が残る夕方、バルコニーから聞こえた物音で目が覚めた。時々、義母様たちの侍女や騎士が嫌がらせに来るから……不安で、寝台の上で丸まっていた。喉が強張って息ができなかった。辺りはとても静かだった。けど、何かが近づいてきているのは確かに感じられた。窓に垂らした日除け布を手繰り寄せる気配。床の上を擦るような足音。押し殺した呼吸。砂の焼けたにおい。

 どうすることもできない私に、あなたの大きな手が触れた。私の口をふさいで。手首を乱暴掴んでから、何かに驚いたようだった。すぐに手を離して、顔にかかった私の髪をかきあげる。嫌がらせなら、今度こそお父様に言いつけてやろうと思って、気後れを隠して彼を睨みつけた。

 見慣れない黒い衣裳の男の人だった。瑪瑙みたいなくすんだ瞳が謎めいていて目を引く。表情はよく分からない。彼は目の周り以外を黄色い布で覆っていたから。
 その布の向こうで、彼が何か呟いた。聞き取れなかった。そして彼は、私の体の上に倒れ込んできた。

「何を……!」

 叫びかけてやめた。彼は私の口から手を離している。ただ力無く、倒れ伏していただけだった。

「……どうしよう」

 彼の名前はテルベーザ。姓はなし。砂漠を放浪する盗賊で、仲間とは手を切り一人で彷徨っていた。とても飢えていた。そして宝物を探して後宮に忍び込んだ……呼びつけたお医者様が聞き出せたのは、その程度の話だった。それを聞いて、お父様は私に言った。彼なら、私の騎士にぴったりだと。
/78ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ