この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
砂の人形
第3章 過去の残り火
「騎士の務めが何かご存知かしら、盗賊さん」
「宮殿の警備、城下町の治安維持、周辺砂漠の安全確保、武術演習、装備の手入れ、それに鉱山の安全確認。ああ、それから」

 騎士になって数か月、テルベーザは騎士の務めのほとんどを理解していた。ただ一つを覗いて。

「元です。僕は元盗賊です」
「あらそう。元盗賊さん、一つお忘れだわ。貴人の付添をね」
「姫様。またその話ですか」

 彼は大きく溜息をついて、辺りを見回した。
 明け方も近い中庭にはまだ鉱石ランプが点いていたけれど、人影はなかった。東の空はやや白みかけていて、もうみんな寝室にいる時間帯。こんな時間じゃなければ、テルベーザは捕まらないんだもの。

「いいですか。貴人の付添なんかやってるのは、名家出身の騎士だけですよ。僕ら騎士にも階級ってものがあります。新入りの盗賊上がりの僕など、最下級なんです。働かない連中の分も僕が動かなきゃいけません」
「じゃあ私の付添は、誰がやるのよ」
「誰もしません」

 あんまりきっぱり言ってくれるから、危うく涙が出るところだったわ。なんとか踏みとどまったけど、テルベーザには気づかれたかもしれない。

「姫様、急には無理なんです。今はまだ無理だと言っているだけです」
「私はもう我慢できないの。一人ぼっちは嫌。みんなが私のこと馬鹿にしてるの知っているもの。騎士も侍女も持てない、孤児王女だって言ってる」
「そんなこと言わせません」
「あなたにはそんな力、ないじゃない!」

 責めるように言ってしまってから後悔した。実のところ、どうでもいいのよ。義母様たちやその取り巻きが何を言っていたって。ただ、テルベーザがそばにいてくれないのが不満だったの。それをどう伝えていいのか、よくわからない。あまり、他人と話すことなかったから。

「今はまだ、そうですけど」

 彼は低くつぶやいた。気分を悪くさせたのだと思うと悲しかった。

「僕が立派な騎士になれば、あなたを守れるんです。きっと、いつか。そのうちに」
/78ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ