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砂の人形
第3章 過去の残り火
 私自信は、闘技会は嫌いだった。幼いころ何度か行ったけど、砂喰い大トカゲに挑んだ騎士が重傷を負うのを見て以来、足が遠のいていた。でも。

「僕頑張ります。あなたに恥をかかせるようなことは絶対にしません。だから見に来てください」

 テルベーザはそう言って、わざわざ私の衣装まで調達してきた。私の髪と同じ真っ黒なドレスで、柔らかなひだが馬鹿みたいに広がったものだった。それから、ガーネットやパパラチアの装飾品も。背中まで伸びた髪をまとめるリボンにも、色鮮やかな宝石が縫いとめられていた。

 テルベーザと出会う前までは、私は髪を短く切っていた。クセが強く、細くて扱いにくい黒髪が嫌いだった。今までの侍女たちはみんな、面倒な髪だと思っていたようだったから。口には出さなくても、梳くときや洗うときの態度で分かるもの。だから、肩の上で短く切りそろえていた。でも、テルベーザは言ってくれた。艶があって柔らかくて、とても綺麗だって。だから、伸ばし始めていた。

 この衣裳や装飾を、私に似合うように選んでくれたのがテルベーザなら嬉しい。そう思いながら、私は身支度を整えた。鏡に映る自分を眺めて、これからちょっと先の自分に思いをはせる。

 闘技会で最優秀者に選ばれると、騎士は一つだけ、お父様に上奏することを許される。お願いはなんでも自由……というのは建前で、「奥様(か、お嬢様)の手に口づけを」というのが決まりになっている。もしテルベーザが最優秀者に選ばれたら。私はどんな顔をしたらいい? なんて声をかけたらいいの? 分からないけど、きっとすごく恥ずかしくなるんじゃないかしら。

 でも、そんな心配は無用だった。テルベーザは野生の砂熊を三頭同時に打ち取って、最優秀者に選ばれた。そして、お父様の前でこう言い放った。

「黒髪の美しいモスリーン様に、同じ年頃の侍女をつけてください」
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