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砂の人形
第1章 監視下の行為
「テルベーザ、早く終わらせて」

 私は、二つの声を無視した。グリゴーとゴリゴー。このひょろりと背の高い影のような双子は、ちょうど一年ほど前にやってきた流れ者だった。体つきや青みを帯びた肌の色からして明らかに異国の人間なのに、お父様は双子を気に入っていた。砂漠に囲まれた私たちの王国で、貴重な水脈を見つけたからだ。それに二人は不思議な言の葉を使って、空気や炎を操る妖術を使った。おかげでこの国の灼熱の昼と極寒の夜は、少しだけ過ごしやすくなった。

 でも、私は大嫌い。この双子の仮面のように凍りついた笑顔や、人を馬鹿にしたような慇懃な口調。お父様も嫌いよ。これまで長く仕えてきた大臣たちよりも、こんな不気味な男たちを重用するなんて。
 そして、こんなことをさせるなんて。

「姫様」

 テルベーザの無骨な指が頬をなぞって、遠慮がちに、唇の間を割って入ってくる。私はいつもの通りその指に舌を這わせ、親指の付け根を探って噛み付く。それを確認してから、テルベーザは私に体重をかける。異物の押し入る甘い圧迫感に歯を食いしばる。そうやって、再び意識を体の外側へ追いやる。そうでないと耐えられない。

 全部が最悪だから。体の痛み、テルベーザの体のにおい。双子の視線、自分の体が立てる音。そう、一番気持ちが悪いのは自分の体。こんな状況なのに。テルベーザはお父様の命令で私に触れているだけなのに。こんなにも喜んでいる自分の体が、耐えられない。そしてそのことを彼に知られてしまうのも。

私にできることは、少しでも早くこんな時間を終わらせることだけ。テルベーザに教え込まれた通りに腰を振って。男を悦ばせることができると、そこの双子に見せつける。

 そのうち自然と、噛みしめる力が強くなる。すると彼は私の肩にもたれかかって、苦しそうに呻く。私を支える熱が一層張り詰めて、私を苦しめる。

 あなたが今、どんな顔をしているか知りたい。でもまた期待を裏切られてしまったらどうしよう。それが怖くて、あなたを見上げることをやめてしまった。あの日から、もう一年が経とうとしている。
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