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砂の人形
第9章 耳をふさいで
 なかなか立ち去ろうとしない姫様に、水筒を突き返す。何か言いたそうな姫様を無視して、僕は天幕の設営を再開した。

「テーゼ……」

 泣き出しそうな声。突然の体の変調、慣れない砂漠の生活、自動人形とかいう兵士や戦争のこと。不安なことだらけで今にも押しつぶされてしまいそうな姫様に、僕の態度が追い討ちをかけているんだろう。気を許しかけていたところで急に梯子を外されて、混乱しているんだ。僕の軽はずみな言動のせいで余計に傷つけてしまった。最初からただのお目付役に徹していれば、姫様が悲しむことはなかったのに。

「私が駱駝から落ちたこと、気にしてるのは分かってる。次からきちんとするから……ねえ、怒らないで。こっち向いて」

 怒ってないと答えて、また砂の上でじゃれ合って
いられればいいのに。そしたら姫様はまた僕を求めてくれるし、大きな瞳に恍惚をたたえて僕を見つめてくれる。きっとご機嫌もなおって、笑顔だって見せてくれる。そうしている間は、僕だってとても満たされて、言いようもないほど。幸せだと思える。

「あと五日しかないのよ」

 そう、そして五日後、この人は僕を捨てる。

 すっかり出来上がった天幕を眺めて、僕は、傷ついているのは姫様じゃなく自分なんだと気がついた。初めから姫様はそのつもりだ。僕とこうしているのは旅の間だけ。それが終わればルニルカンの女王として生きていく。その覚悟ができてるんだ。

 胸の中がざらつく。めちゃくちゃにして全部駄目にしてしまいたい。そんな思いと軽蔑が僕を捻りあげて、身動きできなくしてしまう。妄想でこの人を犯してみても、体は反応しなかった。

「知ってるでしょ? 私、あなたのことがずっと好きだった。最後くらい、応えてくれてもいいじゃない……テーゼもそのつもりだったんじゃないの?」
「砂漠病の予防なんですよ」

 僕は、姫様を振り返る。月明かりを反射して、今にも溢れそうな瞳の輝きをじっと見つめる。可哀想なほど不安を抱えた眼差しは、宮殿で息を潜めていた頃と同じだった。

「休憩の度に慰め合うこと。寝つきも良くなるし、余計なことを考えなくて済みますから」

 姫様は黙って僕を見上げている。あの時のことを、姫様も思い出しているかもしれない。

「でも姫様には効果がなかった。単純に休む時間が足りないせいでしょう、今日はゆっくり休んでください」
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