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砂の人形
第2章 パレードの夜
「サルーザ様、それは……」
「五回。五回と言ったはずだ。だがゴリゴーとグリゴーによると、たった三回だった」
「申し訳ございません、僕が不甲斐ないばかりに」
「まだモスにいらぬ同情を?」

 全てモスリーン様のためだという、サルーザ様の言葉が思い出される。
 姫様は、北の大国ルニルカンの王子と婚約していた。そこで誰よりも愛される王妃になるために、お体を準備しておくこと……王女として生まれたからには当然のことだという。どうせ誰かがやることだ。そして姫様は僕のことを気に入っている。だから僕がやるのが一番いい。それは理解できる。そもそもサルーザ様の決定が覆るはずもないし、何より、姫様の方ではすでに納得しているらしい。ただ僕だけが、この関係の居心地の悪さに馴れずにいる。

「いいえ。僕がいたらなかったためです」
「次に同じことがあれば、残りの二回を双子にやらせる」
「それは」
「嫌か?」

 サルーザ様は振り返った。深いシワの刻まれたお顔には表情がなく、ただじっと、僕を伺っていた。

「では、今日から回数を守るように。多い分には構わん」
「は……」
「ちょうど一年だ。あれも随分慣れてきただろう。先方にはくれぐれも失礼のないようにしておかねば」

 言いたいことだけ言うと、サルーザ様は僕の肩を叩いて去っていった。
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