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潮騒
第8章 正一郎の過去 ー引潮ー
「俺が辛ないとでも思っとんのか? 剛志はお前だけの子やない。俺の子でもあんのやぞ? 辛いに決まっとるやろうが! それでもな、剛志が亡うなったからこそ、次作らんとお袋が五月蝿いやろうが。」
「…亡うなったから次作るて…あんたにとって私は何なん? ただの子を産む道具か私は⁉︎」
「そんなこと言うてないやろう!」
「私にはそう聞こえるわ。だいたい私のことなんか何とも思てないし、どうでもええねやろ? 私はトキエさんの身代わりやもんなぁ⁉︎」
正一郎の顔色が変わる。
「….なんでお前がトキエの事を知ってんのや。誰に聞いた? タエか?」
菊乃はかぶりを振る。
「違う。誰にも聞かへん。見たんや! あの日…剛志が死んだ日! あんたが女と逢引しとるのを!」
「….そういうことか…」
正一郎が重い溜息を吐いた。
「…亡うなったから次作るて…あんたにとって私は何なん? ただの子を産む道具か私は⁉︎」
「そんなこと言うてないやろう!」
「私にはそう聞こえるわ。だいたい私のことなんか何とも思てないし、どうでもええねやろ? 私はトキエさんの身代わりやもんなぁ⁉︎」
正一郎の顔色が変わる。
「….なんでお前がトキエの事を知ってんのや。誰に聞いた? タエか?」
菊乃はかぶりを振る。
「違う。誰にも聞かへん。見たんや! あの日…剛志が死んだ日! あんたが女と逢引しとるのを!」
「….そういうことか…」
正一郎が重い溜息を吐いた。