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潮騒
第8章 正一郎の過去 ー引潮ー
「…別れよか…」
菊乃がぽつりと呟いた。
「今やったら、子の一人もよう見とらん嫁を叩き出したて理由もつくで。癇癪起こして二人も離縁したてなったら、もうあんたに縁談は来んやろけどな。
トキエさんの旦那はもう歳なんやろ。何年後か知らん、旦那が死んだら帰ってくるやろうし、そしたら後家さん貰たらええやんか。」
「…お前は、それでええんか…」
「私やって…、この家に借りがあるんかなんや知らんけど、お姉ちゃんのとこに来た縁談、お姉ちゃんが身体が弱いからお前が行けて言われて来たんや。嫌やった。けど…あんたと過ごして、剛志が生まれて、あないに帰りたいと思てたのに、そうでもないなって…あぁ、結婚てこういうもんなんかなって、ちょっとは思てた…私やって阿呆やない。 過去の終わった話なら『そうか』で済ますけど、あんたの中でトキエさんとのことは終わってないやないか。それはさすがにな。ずぅっと身代わりでおる方が惨めや。あんたと大喧嘩して叩き出されたほうが清々するわ。それやったら流石にお母ちゃんも家に入れてくれると思うしな。」
菊乃は笑った。
菊乃がぽつりと呟いた。
「今やったら、子の一人もよう見とらん嫁を叩き出したて理由もつくで。癇癪起こして二人も離縁したてなったら、もうあんたに縁談は来んやろけどな。
トキエさんの旦那はもう歳なんやろ。何年後か知らん、旦那が死んだら帰ってくるやろうし、そしたら後家さん貰たらええやんか。」
「…お前は、それでええんか…」
「私やって…、この家に借りがあるんかなんや知らんけど、お姉ちゃんのとこに来た縁談、お姉ちゃんが身体が弱いからお前が行けて言われて来たんや。嫌やった。けど…あんたと過ごして、剛志が生まれて、あないに帰りたいと思てたのに、そうでもないなって…あぁ、結婚てこういうもんなんかなって、ちょっとは思てた…私やって阿呆やない。 過去の終わった話なら『そうか』で済ますけど、あんたの中でトキエさんとのことは終わってないやないか。それはさすがにな。ずぅっと身代わりでおる方が惨めや。あんたと大喧嘩して叩き出されたほうが清々するわ。それやったら流石にお母ちゃんも家に入れてくれると思うしな。」
菊乃は笑った。