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渇いた人妻たち
第2章  身の上話
 どの家を訪ねても異口同音に「噂どおりお若いのね、こちらこそよろしく」と優しい声を掛けてくれたのだった。
 その駅は業務量も少なく夜は九時を過ぎると待合室は閑散となるのが常であった。
 征男が着任してから三度目の当直の夜、[今日も無事故で終わりそうだわい]と誰もいない待合室で俯いて掃除をしていたが後ろに人の気配を感じて振り返ると、そこには髪をアップに結った和服姿の三十歳位の身長は少し低めではあるが上品な顔つきの一人の女性が花らしき束を抱えて立って居るのだった。
 「あっ失礼しましたこんばんは」
 征男はその時咄嗟だったのでうろたえは隠せずに要領を得ない挨拶をしてしまった。
 「あのう今度来られた駅長さんですか?」
 「そうです上原征男といいます」
 「初めまして、私吉川浩美と申します」
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