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渇いた人妻たち
第2章  身の上話
 掃除用具の片付けもそこそこにしまい込み事務室へと彼女を誘った。
 浩美は小さな紙包みをそっと差し出した。
 「お一人で大変でしょう、お粗末ですがお茶でも召し上がって下さい」
 その包みを開けてみると和菓子が入っていたので征男は急いでお茶の用意をしようと立ち上がった。
 「私がお入れしますわ」
 浩美はずっと以前から事務室に出入りをしていたようで素早く炊事場へ行き、手早くお茶の用意をして盆に二つの湯呑みを載せて引き返してきた。
 和服で茶盆を持ち、しとやかに歩く姿の妖艶さに征男はそのとき[なんと美しいんだろう]と思い呆然と見惚れて居たのであった。
 「ここで粗茶ですと云うのも変ですわね」
 「奥様にこんな事してもらって申し訳ないです、ありがとうございます」
 「お気になさらなくて結構よ、勝手知ったる駅ですから」
 「ではお言葉に甘えさせていただきます」
 「遠慮されると私も気を使わなくてはならないし・・・あのぅ・・・初対面で、いきなり自分勝手なお願いで失礼なのですが、私は一人っ子で、以前からずっと兄が欲しいと思っていたの、ご迷惑でなければこれから駅長さんのことを兄さんみたいに思いたいのですが・・・駄目でしょうか?」
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