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−紅の雫−
第1章 −勝利の影で−
「…ええ。確かに…似ています。…!!ナイルは……今ナイルは何処に……」
聞こえていた罵倒を思い出し
アレンは少し取り乱した。
「…隣の牢屋に…。同じくかなり暴行されています。おそらく今は…意識がないかと。」
アレンの胸が痛んだ。
それは暴行で受けた痛みとは
比べものにならない程
苦しくて強く瞳を閉じる。
一気に熱が全身を駆け巡り
それは怒りだと思い知った。
(……ナイル……)
その瞬間
アレンの腕がウィルへと伸ばされた。
意表を突いた行動に
ウィルは瞬時に動けなかった。
アレンの手が
ウィルの腰元の短剣を掴む。
金属のぶつかる音がして
短剣が抜かれた。
アレンの手の中で
短剣がキラリと光る。
ウィルの見開かれた瞳に
短剣の光が映っていた。
そんな事をしても
どうにもならない事は
アレンだってわかっていた。
けれど
全身を駆け巡った怒りで
そうせずにはいられなかった。
短剣の先を
ウィルの首元へと突き付ける。
「……抵抗はしないのですか?…貫く力くらい残っています。」
けれどウィルは
悲しげな瞳を向けるだけだった。