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女医の診察日誌
第10章 看護師長の涙
「違うのよ勇次さん、今日は、本当に辛くて泣いてるの」

 言い終わった彼女は、勇次の胸に顔を伏せて、泣きじゃくり

始めたのである。彼は優しく抱きとめた姿勢で、その背中を上

下に撫でていた。それは長く続いたが・・・

「勇次さん、昨日の電話で、私が話があると云ったでしょう、
聞いてもらえますか?」

「話って?・・・僕の子供でも、妊娠したの?」

「違うのよ・・・・私は、来月の20日で今の木下クリニックを
辞めるの・・・そして遠くへ行かなければ、ならなくなったの」

「どうして、また急に辞めるの? 若しかして寿退院なの?」

「私自身はちっとも嬉しくは無いの、だって折角貴男とこんな
関係になって喜んでいたのに、お盆休みに、親の許へ帰ったら、
親同士で私の結婚を決めていて、両方が子供の時からよく知って
いて、親戚筋なので断ることも出来ずに、そうなってしまったの、
貴男と別れなければならないのが、何よりも辛いの」

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