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白薔薇の眠り姫 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第1章 白薔薇姫とワルツを
月城の案内で、梨央の部屋の前に辿り着くと、扉の奥から梨央の声が聞こえた。
「お父様のばか!ばか!だいきらい!」
「お嬢様、そのような乱暴なお言葉をお使いになってはなりません」
嗜めるのは乳母のますみだろう。
…僕が伺う時にはなぜか梨央さんはご機嫌が悪いな。
縣はくすりと笑う。
月城が申し訳なさそうに縣を見て黙礼し、静かに扉をノックした。
「…お嬢様、縣様が見えられました。…失礼いたします」
月城が扉を開け、縣が中に入るとますみは慌てたようにお辞儀をし、梨央にも促す。
梨央は、部屋のローラアシュレイのソファに座り、自分くらいの大きなテディベアのぬいぐるみを抱きしめていた。
縣を見ると、への字に曲げた口を恥ずかしそうに戻し、照れたように俯いた。
青いパフスリーブのワンピースに、白いフリルが愛らしいエプロンを着けている。
白いタイツにストラップ付きの黒い革靴。
長く美しい黒髪はさらりと下ろされていて、ドレスと共布の青いヘアバンドで留められていた。
…まるでルイスキャロルの不思議な国のアリスだ。
縣は梨央の無垢な美しさに見惚れながら、笑みを浮かべた。
「こんにちは、梨央さん。ご機嫌いかがですか?」
梨央は恥ずかしそうに目を伏せながら小さな声で挨拶を返す。
「…ご機嫌よう。縣様…」
子供らしいぎこちなさが可愛らしい。
縣は梨央の前に立ち、持っていた菓子箱を手渡す。
「どうぞ。村上開進堂のクッキーです。梨央さんがお好きと伺って取り寄せました」
梨央の目がぱっと輝く。
「ありがとうございます!」
…やはり子供だな。
縣は梨央の無邪気さに思わず頬を緩める。
ますみが一礼をし、
「お茶を運ばせますわね。縣様、どうぞお掛けになってごゆっくりなさってくださいませ」
と、月城と一緒に部屋を辞した。
縣は梨央の向かい側に座ると、優しく話しかけた。
「…梨央さんは何に怒っておいでだったのですか?」
梨央は俯き、もじもじした。
「…仰りたくなかったら仰らなくてよいのですが…」
梨央はゆっくり顔を上げ、縣を見つめる。
切れ長の瞳に黒いまつげが長く縁取り、優美な人形のような美しさだ。
紅もつけていないのに、さくらんぼのように赤くつややかな唇が開かれる。
「…お父様が…舞踏会に連れて行って下さらないから…」
「お父様のばか!ばか!だいきらい!」
「お嬢様、そのような乱暴なお言葉をお使いになってはなりません」
嗜めるのは乳母のますみだろう。
…僕が伺う時にはなぜか梨央さんはご機嫌が悪いな。
縣はくすりと笑う。
月城が申し訳なさそうに縣を見て黙礼し、静かに扉をノックした。
「…お嬢様、縣様が見えられました。…失礼いたします」
月城が扉を開け、縣が中に入るとますみは慌てたようにお辞儀をし、梨央にも促す。
梨央は、部屋のローラアシュレイのソファに座り、自分くらいの大きなテディベアのぬいぐるみを抱きしめていた。
縣を見ると、への字に曲げた口を恥ずかしそうに戻し、照れたように俯いた。
青いパフスリーブのワンピースに、白いフリルが愛らしいエプロンを着けている。
白いタイツにストラップ付きの黒い革靴。
長く美しい黒髪はさらりと下ろされていて、ドレスと共布の青いヘアバンドで留められていた。
…まるでルイスキャロルの不思議な国のアリスだ。
縣は梨央の無垢な美しさに見惚れながら、笑みを浮かべた。
「こんにちは、梨央さん。ご機嫌いかがですか?」
梨央は恥ずかしそうに目を伏せながら小さな声で挨拶を返す。
「…ご機嫌よう。縣様…」
子供らしいぎこちなさが可愛らしい。
縣は梨央の前に立ち、持っていた菓子箱を手渡す。
「どうぞ。村上開進堂のクッキーです。梨央さんがお好きと伺って取り寄せました」
梨央の目がぱっと輝く。
「ありがとうございます!」
…やはり子供だな。
縣は梨央の無邪気さに思わず頬を緩める。
ますみが一礼をし、
「お茶を運ばせますわね。縣様、どうぞお掛けになってごゆっくりなさってくださいませ」
と、月城と一緒に部屋を辞した。
縣は梨央の向かい側に座ると、優しく話しかけた。
「…梨央さんは何に怒っておいでだったのですか?」
梨央は俯き、もじもじした。
「…仰りたくなかったら仰らなくてよいのですが…」
梨央はゆっくり顔を上げ、縣を見つめる。
切れ長の瞳に黒いまつげが長く縁取り、優美な人形のような美しさだ。
紅もつけていないのに、さくらんぼのように赤くつややかな唇が開かれる。
「…お父様が…舞踏会に連れて行って下さらないから…」