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白薔薇の眠り姫 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第1章 白薔薇姫とワルツを
廊下を歩きながら、梨央はうきうきしたように飛び跳ねて縣を見上げる。
「本当に、ワルツを教えてくださるの?」
縣はそんな梨央が愛しくてならない。
梨央の小さな手を優しく握りながら並んで歩く。
「ええ。…こう見えて僕は大学のダンス大会で優勝した腕前なんです」
「すごい!縣様、すごい!」
梨央のなめらかな白い頬が紅潮する。
後ろを振り向くと、月城が黙って蓄音機を腕に持ち、付いて来る。
…梨央が広間で練習するのは恥ずかしいと言いだしたからだ。
「重くないかい?手伝おうか?」
縣が声をかけると、月城は静かに返事をした。
「いいえ。大丈夫です」
「月城は力持ちなのよ。私のこともよく抱っこしてお二階まで連れて行ってくれるの!」
ワルツの練習が出来る嬉しさからか、いつになく梨央は饒舌だ。
月城ははにかんだような微笑を黙って浮かべた。
…なんだよ、月城も梨央さんを抱っこしているのか…。
思わず、子供めいた嫉妬心を覚える。
縣はわざと戯けたように話しかける。
「では僕も麗しのお姫様を抱っこして、レッスン場までお連れしましょうか!」
と、梨央を大胆に抱き上げる。
「きゃ!縣様!」
梨央が声を上げて笑う。
梨央の小さな華奢な身体をぎゅっと抱きしめる。
林檎の花のような初々しい香りが縣を包む。
ちらりと月城を見やると、やや羨望めいた眼差しの執事見習いと目が合い…やがて彼の方からさりげなく視線を逸らした。
…やはりな…。
縣は静かに微笑んだ。
この美しい執事見習いも、白薔薇姫の虜なのだ…。
縣は、梨央の絹糸のようにさらさらな黒髪を撫でる。
美しい白薔薇は罪深いものだな…。
乳母のますみが、ハイティーのワゴンをメイドに押させながら、困惑したように近づく。
「まあ!縣様、どちらに?…お茶の支度が整いましたのに…」
縣は誰か見ても魅力的な笑みを浮かべ、振り向く。
「申し訳ありませんが、お茶はワルツのレッスンの後にいただきます。善は急げと申しますからね」
「本当に、ワルツを教えてくださるの?」
縣はそんな梨央が愛しくてならない。
梨央の小さな手を優しく握りながら並んで歩く。
「ええ。…こう見えて僕は大学のダンス大会で優勝した腕前なんです」
「すごい!縣様、すごい!」
梨央のなめらかな白い頬が紅潮する。
後ろを振り向くと、月城が黙って蓄音機を腕に持ち、付いて来る。
…梨央が広間で練習するのは恥ずかしいと言いだしたからだ。
「重くないかい?手伝おうか?」
縣が声をかけると、月城は静かに返事をした。
「いいえ。大丈夫です」
「月城は力持ちなのよ。私のこともよく抱っこしてお二階まで連れて行ってくれるの!」
ワルツの練習が出来る嬉しさからか、いつになく梨央は饒舌だ。
月城ははにかんだような微笑を黙って浮かべた。
…なんだよ、月城も梨央さんを抱っこしているのか…。
思わず、子供めいた嫉妬心を覚える。
縣はわざと戯けたように話しかける。
「では僕も麗しのお姫様を抱っこして、レッスン場までお連れしましょうか!」
と、梨央を大胆に抱き上げる。
「きゃ!縣様!」
梨央が声を上げて笑う。
梨央の小さな華奢な身体をぎゅっと抱きしめる。
林檎の花のような初々しい香りが縣を包む。
ちらりと月城を見やると、やや羨望めいた眼差しの執事見習いと目が合い…やがて彼の方からさりげなく視線を逸らした。
…やはりな…。
縣は静かに微笑んだ。
この美しい執事見習いも、白薔薇姫の虜なのだ…。
縣は、梨央の絹糸のようにさらさらな黒髪を撫でる。
美しい白薔薇は罪深いものだな…。
乳母のますみが、ハイティーのワゴンをメイドに押させながら、困惑したように近づく。
「まあ!縣様、どちらに?…お茶の支度が整いましたのに…」
縣は誰か見ても魅力的な笑みを浮かべ、振り向く。
「申し訳ありませんが、お茶はワルツのレッスンの後にいただきます。善は急げと申しますからね」