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太陽の下で
第5章 十三夜
聞き流して通り過ぎてしまいそうな小さな声だった。

通り過ぎなかったのは、もう一度聞こえてきたからだ。

「せんせい、た…て。」

すぐそばを走って行く車の音に消されてしまいそうな、そんな小ささだった。

もしここが、広野さんに何度か声をかけられたコンビニでなければ、きっと気づかずに通り過ぎていたと思う。

おそらく彼女だろうと思いつつ、キョロキョロと声の主を探すと、コンビニの裏手で、膝を抱えて小さく身体を丸めている女の子を見つけた。

近づいてみてビックリした。

僕の知っている広野さんとは随分と様子が違うんだ。

きれいなツヤツヤだった髪の毛は、ザクザクと切り落とされていて、それは当然美容院で切ったのではないことが一目でわかる。

それだけではない。

「どうしたんですか?何がありました?」

僕は髪の毛の異変にしか気づいていなかったけど、彼女の目の前まで来ると、身体がカタカタと震えていることに気がついた。

寒いのか、怖いのか、僕がしゃがんでそっと背中を撫でようと触れると、ビクッと身体を大きく震わせた。

涙が乾いた跡があって、たくさん泣いたのか目は腫れていた。

頰は殴られたように赤く腫れて、洋服はところどころ破れている。

「たすけて。」

小さな震える声で、絞り出すようにそう呟いた。
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