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第5章 十三夜

この日の彼女は私服で、こんな寒空の下にいるにはひどく薄着だった。

捨てられた仔猫のような彼女に、僕が身につけていたコートとマフラーを着せようとして手が止まった。

さっきみたいに、また怖がらせてしまってはいけない。

でもこんな格好のままにもしておかない。

誰が見たって、レイプを疑うような酷い姿をしていたんだ。

一瞬躊躇って、なるべく落ち着いたトーンで声をかけた。

「広野さん、そのままでは寒いですから、僕ので悪いんですけどコート着てくださいね。」

彼女に反応はなかったけれど肩から羽織らせて、「ちょっとごめんなさい」って呟きながらマフラーも巻いた。

それでもガタガタ震えている彼女に、
「何か温かいものを買ってきますから、待っていてくださいね」
と伝えて立ち上がった。

それと同時に僕の左手が下から引っ張られ、消えそうな声で
「行かないで」
と聞こえた。

「わかりました。大丈夫ですよ。隣に座りますね。少し質問してもいいですか？」

僕の手をまた微かに引っ張ったので、いいと言うことなのだろうと思い、１人分の距離をあけて、隣に腰を下ろした。