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第4章 上弦の月

あれから数日、僕にキスをした広野さんには、あの夜から会っていない。

元々彼女は気まぐれにしか授業を受けに来ないので、次にいつ来るのかもよくわからないけれど、彼女の顔を見ると僕の心がざわついてしまいそうなので、少しほっとしていた。


僕は相変わらずいつものルーティンの中にいる。

朝は７時に起きて、コーヒーを淹れるところから始まり、夜は仕事を終えたら真っ直ぐに帰り、お風呂に入って１日を終えるまで、何にも変わらない日常だ。

そう、何にも変わってなんかないんだ。

高校生の気まぐれに、何かを変えられてしまうような僕ではない。

今日も僕は女の人が苦手だし、出会いもときめきも求めていない、大丈夫、僕は少しも変わってない。

何かがいつもと変わったとするなら、あのほんの一瞬の温もりを時々思い出しては、ほんの少し顔を赤くして、何にも変わっていないと自分に確かめているくらい。

童貞の僕をかわいそうに思って、きっとからかったんだ。

だから女の人は苦手だ。

特に女子高生は。

僕が女の人を苦手だと、決定的に思うきっかけになったのも、女子高生達の悪ふざけが原因だったんだ。