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薔薇色の鎖
第1章 囚われる
「いいか、声出したら殺すからな・・・」

男は私の喉元にナイフを添えて、そう言った。

いつも通っている道だったし、一本それれば繁華街だと思って油断した・・・そう後悔した。

たまたま短大のサークルの会合があって、今日は遅くなってしまった矢先の出来事だった。

近道だからと少し一本入った川沿いの道に入って歩いていたら、不審な男に襲われナイフで脅されている・・・そんな状況だ。

怖くて脚が震えているけど、悟られまいと口を堅く結んで耐える。

そして男はナイフをそえたまま、私の腕を掴んで暗がりに連れ込もうとした。

強姦魔かもしれない・・・瞬時にそう思った私は必死に抵抗したけれど、男の力にかなうはずもなく、引きずられそうになる。

「いやっ・・・!!!」

思わず声を出すと、男がナイフを振り上げるのが見えたその時だった。

その振り上げた腕を、誰かが掴むのが見えた。

「女の子に暴力を振るうなんて、感心しないなぁ・・・」

私の腕を掴んでいた男の力が緩んでいき、私はその隙に腕を振り払う。

そして見上げると、男の腕を後ろに捻り上げる背の高い男性の姿が目に入った。

長身で濃いグレーのストライプのスーツに、薄いブラウンの髪に銀縁の眼鏡。

目が切れ長で、端正な顔立ちをしている少し妖艶な空気をまとったその人が、私を襲ったその男を締め上げていた。
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