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淫欲の果てに。人妻・怜香32歳の記録
第2章 漆黒の扉に導かれて
「明日、梨美と食事に行ってくるから帰りは遅くなるかも。」
「俺も、明日は遅いから食事は適当に済ませておくよ。」

夫の帰宅が早く、共に夕食のビーフシチューを食べていた木曜日。梨美と出かける旨を告げると、夫はいつものように了解し、そのまま入浴、寝室へ向かう。
自分が決めた行動の順序をかならず守り、毎日くり返されている、決まりきった夫の生活パターンだ。
そんな夫の生活の中に、私とのスキンシップ、まして夫婦のセックスなどという時間は存在しない。夫の脳内から私との性的な交わりという項目は除外されており、そもそも存在しないもの、といった扱いになっているようだ。

このことに対し、どうして私を求めないの、せめて手に触れるくらいの接触くらいはしてもいいんじゃないの、などなんで、どうしてと、不満に思うことはもうすでになくなった。いくら望んでも実現されないものに対して、私は期待するという感情そのものを捨てることにした。

今日も私は夕食後、夫と自分2人分の食器を洗い、入浴し、1人のベッドに入る。
気づくと私の行動も、自然と夫と同じように、余計なことの一切入り込まない、パターン化されたものとなっていた。

性的なことの存在しない日常、というものに、完全に溶け込んでしまっている。日常に性的な接触が一切ないと、男性が欲しいと思う感情、いやらしい欲求が涌くこと自体がここまでなくなってくるものなのか。セックスレスというものが、逆に性的な欲求を失わせる事態をもたらすとは思ってもいなかった。何事も、身をもって体験してみなければわからないことだらけだ。

12才の幼い少女だった頃に毎晩考えていたような、薄暗くてドロドロしていて、後ろめたい、決して口に出して人には言えない淫らな妄想に身をよじらせることは、もうない。
私の中から、何かを求める気持ち、性的な欲求、衝動は、消え去ってしまったのだろうか。
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