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第2章 漆黒の扉に導かれて

梅雨入り前の東京都内に漂う圧倒されるような湿り気を帯びた熱気が、まだ暑さに慣れていない私の身体に容赦なく降りかかる。この日の私は、肩のフリル袖に草花の模様がプリントされた深いブルーのトップスに、膝までの長さがある少しタイトなベージュ色のスカーとストッキング、低いヒールにストラップがついたブラックのパンプスを身に着けていた。

夜になるとますます暑さが増しはじめ、汗ばんだ脚にまとわりつくストッキングをいっそ脱ぎ捨ててしまいたいくらいだった。

「私たちさ、時代の流行には乗りません、みたいな、たまに変に反発してしまうところがあるじゃない。ブログとかに写真のっけたくなるような見た目重視の料理に拒否反応が出たりさ。だから今日もいつものお店にしようと思ったんだけどね、昔ながらのナポリタンがすごくおいしいダイニングカフェがある、ってネットやテレビでけっこう話題になってるお店があるのよ。
話題にのせられて旬のお店に行くのはなんか悔しいけど、私の昔ながらのナポリタン好きは怜香も知ってるでしょ。いちど、食べてやろうって思ったわけ」

梨美にそう聞かされながら連れてこられたのが、人混みの多い駅から少し離れた場所にある、小洒落たカフェだった。

パスタやハンバーグ、サンドイッチなど様々なメニューが充実しているこの店は、ドリンクも定番のものからソイミルクのラズベリーソースがけ、ブルーベリーヨーグルトホイップジャムのせ、など凝ったものが多く、色々と目移りしてしまう。