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淫欲の果てに。人妻・怜香32歳の記録
第5章 青黒い部屋 淫蕩の血
冬木がチョコレートを1つつかみ、口へ運ぶ。白く伸びる指先が妖艶に見え、息をのむほど美しい。
この手指が、私を…。胸の奥が一瞬疼く。なぜ私は、官能小説によくあるような、ありきたりな想像をしているんだろう。しかも夫がいる身で、なんて、まさによくある使い古された状況ではないか…。
「あの、この前は、ごめんなさい。私、まさか自分がお酒であんなになってしまうとは思いもしていなくて…」
様子をうかがいながら、途切れ途切れに吐き出した自分の言葉にどこか媚びが含まれているような気がして、萎縮してしまう。違う、そんなつもりで言ったんじゃない…
「ああ、いえ。…このチョコレート、おいしいですね。甘すぎなくて、ここのドライフルーツによく合う。」
「あ…よかったです。私、ここのお菓子好きで、よく買うんです…。」
皆瀬さんがウイスキーをカウンターへ静かに出すと、また沈黙が訪れる。グラスを持つ冬木の細いけれど男性らしい関節がしっかりとした手に、目がいってしまう。
男性の手は、なぜこんなに美しいのだろう。女性である私からすると、女性の手はみな同じに見える。どの女性の手もつるんとしていてきれいだけど、どれも同じで個性がない。
だけど、男性の手は違う。ゴツゴツした男らしい手もあれば、華奢ですべすべした手指を持つ男性もいて、千差万別だ。
この手指が、私を…。胸の奥が一瞬疼く。なぜ私は、官能小説によくあるような、ありきたりな想像をしているんだろう。しかも夫がいる身で、なんて、まさによくある使い古された状況ではないか…。
「あの、この前は、ごめんなさい。私、まさか自分がお酒であんなになってしまうとは思いもしていなくて…」
様子をうかがいながら、途切れ途切れに吐き出した自分の言葉にどこか媚びが含まれているような気がして、萎縮してしまう。違う、そんなつもりで言ったんじゃない…
「ああ、いえ。…このチョコレート、おいしいですね。甘すぎなくて、ここのドライフルーツによく合う。」
「あ…よかったです。私、ここのお菓子好きで、よく買うんです…。」
皆瀬さんがウイスキーをカウンターへ静かに出すと、また沈黙が訪れる。グラスを持つ冬木の細いけれど男性らしい関節がしっかりとした手に、目がいってしまう。
男性の手は、なぜこんなに美しいのだろう。女性である私からすると、女性の手はみな同じに見える。どの女性の手もつるんとしていてきれいだけど、どれも同じで個性がない。
だけど、男性の手は違う。ゴツゴツした男らしい手もあれば、華奢ですべすべした手指を持つ男性もいて、千差万別だ。