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淫欲の果てに。人妻・怜香32歳の記録
第5章 青黒い部屋 淫蕩の血
ふらふらとした足取りで、ブルーグレーのマンションを後にする。

欠落していた現実感を徐々に取り戻しかけているが、まだ頭がおかしい。下半身の深いところに残ったじんじんとした痺れが、先程までの時間が現実であったことを示している。
夫以外の男性と、セックスしてしまった。しかも、通常とはかけ離れた行為を。

まだ電車は動いているもののとても駅まで歩く気になれず、タクシーに乗り込む。座ったとたん身体がどっと重くなり、シートに沈み込んでいった。
「今日は遅くなるんだっけ?」スマートフォンを見ると、2時間前に夫からのメッセージがきていた。「いま、帰りだよ」おぼつかない指でなんとか打ち込み、送信する。


手首を見ると、横の骨ばった部分がうっすら赤くなっているのみで、絡みつくような縄の痕跡はもうほとんど残っていない。脚を見ても、目立つ跡はもうなかった。
生々しい縄の跡を夫に見られることはないと安堵するとともに、もう痕跡が残っていないことが切なくて寂しくて、息が詰まる。この感覚は、一体何…。

余韻だろうか。身体の奥のほうが、まだ疼いている。

知り合ったばかりの男性に犯されるようにセックスをして、我を忘れるほど快楽を得てしまった。大切な夫を裏切っているのに、淫欲の行為に溺れた。
身体の至る所を嬲られ、最奥部まで陵辱されながら淫らな液体を垂れ流し、喘いでいた。

冬木様。私の身体を転がす男性の手を思い浮かべると、胸が詰まって熱くなる。
身体の奥部がぬらぬらと潤い、求めようとしていることに気づく。私はまだ、男性を欲しているというの。
見慣れたマンションの一角が見えた。もうすぐ、自宅に到着する。

見慣れた自宅の玄関ドアが、未知なる空間への入口に見えた。何もかも失う恐怖が、頭を一瞬よぎる。それでも私はここへ帰らなければならない。
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