パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第8章 得体の知れない生き物

これからは、もっと注意を払っていかないといけない。行為の痕跡を少しも悟られぬよう、常に気を配って暮らしていく。
こうして、夫への秘密をまた1つ抱え込む。妻という立場の人間が性を貪るとは、こういうことなんだ。私はそれに耐えられるのだろうか。

妻である私と、性的欲望に飲み込まれた私。どちらも同じ私という人間だが、2つの顔を持つことを許されることはない。
夫との平穏な生活を維持しながら、他の男性との性的快楽に溺れることの、埋められない落差。世間はそれを罪深き行為と言うだろう。性を貪り夫を欺いた妻は、民法で裁け。制裁を加え、社会から抹殺しろ。不貞を犯した妻を罵る、大勢の人々の声。そして、私に背を向け二度と振り向いてはくれない真仁の後ろ姿。

それなのに。身体は、冬木様を求めて悲鳴を上げる。
もう、私の身体が、被虐を求める心が、冬木様からの淫靡な施しを求めてやまない。