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第8章 得体の知れない生き物

ノクターン第20番「遺作」をオーディオにセットし再生ボタンを押す。悲しげながらも力強い音調が身体の芯まで入り込み、全身の骨が溶けていく。ゆっくり、じわじわと溶け出し、新たな私を形成する。私の身体が、そうなるよう自動的に判断して。心まで一緒に、引きずられるように。

服の下に残る赤い痕跡が、まるで家畜の動物を捕らえていた痕のようで。
身動きを封じられ、自分の肉体すべてを思うままに扱われる。絶対的な男性の欲のために生かされ、最後はそのために命を奪われる動物。そんなことは露知らず、快楽の餌を与えられまんまと支配され、淫蕩に耽ることを覚えた、雌の動物。
支配される悦びを覚えた雌は、これから起きること、与えられるものに、胸が疼いて仕方がない。

冬木様に捕らわれ、性欲に囚われた得体の知れない雌の生き物が、私の中で震えながら、それでも餌を待っている。

麻薬のような快楽を。
陳腐でありふれた愛などとは正反対の、痛みを。