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第9章 閑古鳥の闇

「今日もお疲れ様。明日もけっこう予約埋まってて、夏本番は忙しいけど、明後日もよろしくね。」
「はーい！お疲れ様です、梨美さん。」

スタッフの子たちが帰宅し、締めの作業を終えれば、やっと私も帰路につける。
火曜日が定休日のネイルサロンの店長を任されてから、気づけば1年が経っていた。休みが週に1日しかない生活にはもう慣れたけど、たまにどっと疲れが押し寄せる。そろそろ、他の曜日もどこか休みにして、バイトの子にお店を任せたい。

明日は、久々に予定のない休日だ。今日はまっすぐ帰る気分でもない。
お酒でも飲んで帰りたいけど、月曜の夜は怜香も誘いづらい。
あれから怜香とは会っていないし、特に連絡もない。あの後のことが何となく気になっているし、近いうちに連絡はしてみるつもりだ。

30才を越えてから、この時間にいきなり飲みに行ける友達がずいぶん減ってしまった。襲いかかる寂しさを振り払う。無駄に寂しがるのはやめて、今日は1人で行けそうなお店へ行こう。

思い浮かんだのは、この前怜香と行ったお店。Signal。あそこのドライフルーツが、また食べたい。